「永い後日談のネクロニカ」崩壊した世界は真っ白なキャンパスだ




前回、初心者がTRPGでGMをする事について記事を書いた。
その際システムについても少し触れたので、具体的にシステムの紹介をしていこうと思う。
今回紹介するシステムは、言うなれば文明崩壊済み退廃TRPG「永い後日談のネクロニカ」である。

TRPGシステムの世界観は本作を含め強烈なものが多いので、ゲームの紹介と同様に、向き不向きを記号で示していく。

グロ描写に耐性があることが前提です
所謂ポストアプカリプスな世界が好きな人
健気に頑張る女の子が好きな人
女性のロールプレイに抵抗がある人
× グロ耐性が無い人

終わった世界を彷徨う人工少女になる

時代は未来。核戦争により人類の98%が死滅した地球かもしれない星。
かつての文明が発明した「電気信号で自我を再現する技術」を生体PCに組み込み、動く死体として目覚め、記憶を失くした少女(ドールと呼ばれている)たち。
こんな世界で、こんな少女になって、自分の記憶を取り戻すために旅をする。

そんな世界観だ。なので当然のようにグロ要素がある。
PCたちは人間としての意識を持っているにもかかわらず、人間の物ではない部品で構築されているし、生き残っている生物などは異形で、それらと戦ってダメージを負えば部品単位で自らの体が吹き飛んでいく。

リョナもあればクリーチャーもある。
半壊し発狂したドールや、崩壊した施設の記録などの描写は精神的にも来るものがある。
それらの中でも必死に少女としての意思を持って生きて(?)いこうという遊びである。
はっきり言って悪趣味としか形容できない。

しかしこれを筆者がおススメするのは、その悪趣味を踏まえても魅力にあふれているからだ。

困難に立ち向かう魅力の分かりやすさ

TRPGを好む人、又は現在興味を持っている人で多く共通するのは「困難に立ち向かうアツい展開が好き」という点だと思う。
TRPGではそれを、読者ではなく登場人物として疑似体験できる。TRPGの大きな魅力の一つだ。

しかしよくある、剣と魔法のファンタジーなシステムで考えてみよう。
最初はどこにでもあるようなダンジョンで、レベル上げよろしくゴブリンやゴーレムと戦うし、それによって助かるのはパっと出てきた依頼人だ。
もちろんそれによって得られる報酬やマジックアイテムは嬉しいし、戦闘も楽しいシステムが用意されている。
魔法を使うというのも現実ではできない体験である。その魅力は確かに存在する。

しかし「困難に立ち向かうアツい展開」にたどり着くまでには十分なレベル上げと自分のキャラクターの掘り下げが必要で、すぐに体験できるものではない。

永い後日談のネクロニカは、そういった過程をすっ飛ばす。
しかもそれでいて、プレイヤーを置いてけぼりにしないまま「困難に立ち向かうアツい展開」を提供できるのだ。

なにせ周りに困難しか存在しないのだ。
自分の体は記憶もない上に異形の体。出会う敵は少女の体躯ではとても敵いそうにない、おぞましいクリーチャー。
それでも戦わなければ、自分の心を狂気から遠ざけてくれている仲間が犠牲になる。
これを困難と呼ばずして何と呼ぼうか。これが最初から用意されているのである。

別に世界の存亡などを賭けてはいない。言ってしまえばこの世界はとっくに終わっている。
自分が壊れ切ってしまおうと世界には何も影響がない。もはや大したものは残っていないのだ。
それでも少女たちは、せめて自分は終わってしまわないように、せめて自分の仲間が終わってしまわないように戦うのだ。
これをアツいと言わずして何と言おうか。これが最初から用意されているのである。

グロいビジュアルも、悪趣味な世界観も、「困難に立ち向かうアツい展開」を迅速に提供する手段であると理解すれば、
そういった物を好んでなくとも、このシステムを楽しめると思っている。

システムが驚くほどシンプル

これは以前「GM視点で考えるTRPG初心者が遊ぶシステムの選び方」でも少し触れた。

使うダイスは10面ダイス1個のみ。
他のシステムで6面ダイスのみを使うものがあるが、こういったものはダイスを複数個使うものが多い。
しかしこいつはどんなにキャラクターを強化しても、どんなに限定的な判定をしようと使うのは10面ダイス1つだけだ。

強いて言えばキャラクターメイクの時に2つ使用する場面がある。
しかしこれは100面ダイスの代用なので、2回連続で振れば1つで済む。やはり1つで問題は無い。

戦闘システムは他に似たものが思いつかない、独特なシステムを採用しているので少し慣れが必要だ。
とはいえ複雑なものではないし、むしろ慣れてしまえば他の戦闘システムよりもかなりスピーディーに進行する。

シナリオが作りやすい

これは世界観によって副次的に生まれた利点だ。
荒廃した終わり切った世界なので、まともな町やコミュニティは残っていない。
シナリオを作るときに用意する舞台は、文字通りの意味で建造物1つあれば十分なのだ。

建造物1つでシナリオが1つ作れる。ならば2つや3つ用意したら?1つだが区分けできるほど巨大なものであれば?
もうそれだけでキャンペーンができる大舞台の出来上がりだ。シナリオ作りにおいて物凄くハードルが低い。

システムがシンプルであったり、シナリオが作りやすいのはPLはもちろんGMにとっても非常に大きなメリットだ。
であるため、こんな過酷な世界を生きる悪趣味なシステムであっても、筆者は初心者にうってつけのシステムだと考えている。

まとめ

ここまで「永い後日談のネクロニカ」の魅力を紹介してきた。
しかしこれだけでネクロニカの魅力は終わらない。

何故なら、今紹介したのは「基本ルールブック」の内容に過ぎないからだ。
ネクロニカには全3巻の「サプリメント」が存在する。後付けできる追加ルールのことだ。

「サプリメント」についてはこちらの記事で詳しく紹介をしている。

「永い後日談のネクロニカ」3冊のサプリメントを紹介する

2018.09.30