頼むから皆どうにかして「World of Darkness」をやってくれ。




これまで「永い後日談のネクロニカ」「キルデスビジネス」と、二つのTRPGシステムを紹介してきた。

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今回紹介するシステムはこれらと根本的に大きく異なるシステムだ。はっきり言って敷居が高い。

どのように敷居が高いのか。いうなれば「絶版」である。既に出版が止まっており、何か大きな動きが起きて再開しなければ、今現在世に出回っている現物しか手に入れる術がない。入手するには中古品かオークションを血眼で探し、本来よりもかなり高くなった値段で買うしかない。

どうしてそんな入手困難なものをお勧めするのか?答えは単純で、「面白いから」である。

ひとまずどのように面白いかはこの後詳しく記述するとして、今ここでは「絶版になってしまっているが、このシステムは生まれる時代が悪かっただけである」という話がしたい。

はじめに ~TRPGの歴史を局所的に振り返る~

このシステムが世に出たのは2005年だ。世代と文化が近い人に手っ取り早くこの時代を認識してもらうために、いくつか情報を用意した。

2005年とは、

ゲームキューブ発売から4年後
PSP発売から1年後
『愛・地球博』開催年
ニコニコ動画がサービスを開始する1年前
プレステ3発売の1年前

言うまでもなく、少なくとも日本ではTVゲーム全盛の時代である。steamのようなPCゲームのプラットフォームなどなく、しかしTVゲームは世に溢れていた時代。

このときTRPG業界では1990年代から続く「TRPG冬の時代」からようやく復興の兆しが見え始めた時代だ。長い休止状態が続いていた名作シリーズが少しずつ復活し、しかしまだ決め手に欠けていたのが2005年だ。

TRPG復活・普及の決定打となったであろう(と筆者が思っている)、いわゆる「リプレイ動画」に注目が集まるようになるまでは、2012年を待たなければならない。

そんな時代に生まれたシステムである。2012年になれば、TRPG復活の決定打となるリプレイ動画というジャンルが発生する。しかしその頃には皆から絶妙に忘れられている、非常に惜しいタイミングだったのだ。

せめてあと5年、できれば7年後に出ていれば、往年の名作CoCと肩を並べるホラーファンタジーシステムとなったかもしれない。

しかし「World of Darkness」(以下WoD)はそうはならなかった。そうはならなかったのだ。それでも筆者はWoDを「だからこの話は、ここでお終いなんだ」などと言いたくない。答えは単純で、「面白いから」である。ようやく本システムの話に移る。

例によって表を用意した。

CoCは好きだけど、ルールが少し面倒だよね……という人
人外に扮して行うセッションが好きな人
流血表現や社会の裏側といったものに嫌悪感を示す人
TRPGそのものが苦手な人

ずいぶんと偏った表になってしまったが、筆者の主観では「TRPG好きでこのシステムに明確な不満が出る人」はかなり少ないと考えている。それくらい優秀なシステムなのだ。

概要 ~現代社会の裏で生きる人ならざる者~

WoDは現代社会を舞台にしたホラーTRPGシステムである。

これだけではCoCと大した違いを感じないが、大きな違いとしてCoCで言うところの「神話生物サイド」をプレイすることが可能だ。

とはいえWoDはクトゥルフ神話をベースにしていない。登場するのは吸血鬼やワーウルフ、あるいは魔法使いだ。それでも現代社会を舞台にして、こういった人間以外を演じることができるのはとても強い魅力である。

注意してほしいのは、基本ルールブックでは「人間」しかプレイできないという点だ。先に上げた人外としてセッションをするには、それぞれ別途サプリメントが必要になる。

もう一つの特徴は、「判定に10面ダイスしか使用しない」という点だ。

筆者の考える良いTRPGとは、使うダイスの数が少ないTRPGだ。ダイスが多ければ多いほど、特にダイスの種類が増えるほどルールは煩雑になる。ネクロニカと違い、一度に複数個(最大10個)の10面ダイスを使用するため、オフラインでセッションする場合は少し準備が必要だ。

極めて汎用性の高いステータスと判定ルール

筆者がこれほどまでにWoDを絶賛する理由が「いくらでも応用の利く判定方法」である。

簡単に説明しよう。下の図は、筆者がセッションする際に作成した自作キャラクターシートの一部である。

PCには主に「能力」「技能」の二つのステータスがある。能力は1~5、技能は0~5レベルで表される。

WoDでの判定は基本的に「能力」と「技能」を1つずつ選んで、その合計レベルを使用して行われる。しかし目的の「技能」を持っていない場合でも、「才能で解決する」という表現として「能力」を二つ使用して判定が可能だ。

この「能力」こそが高い汎用性を生み出す理由となっている。そこをしっかり解説しておきたい。

キャラクターシート上部に記載されている9つの項目が「能力」である。

精神的能力に知性・機知・堅忍。身体的能力に筋力・敏捷・体力。社会的能力に外見・交渉・冷静がある。そしてこれらは左列に書かれているような、「パワー」「正確さ」「抵抗力」の3つにも分類できる。

これはその「能力」のニュアンスというか、おおまかな使い方として理解してほしい

つまり、精神力をパワープレイのように扱うのであれば知性、身体能力を正確に扱うのなら敏捷、社会的能力を何かに抵抗するために使うのなら冷静……という風にそれぞれの能力を理解するのだ。

これが実際の判定の際に物凄く役に立つ。判定の際、良く行われるであろう判定(崖を登ったり、機械を修理したり)についてはルールブックに使用する「技能」と「能力」が記載されている。しかし、必ずしもルールブックの通りに「能力」を採用する必要はない。

理由を説明したうえで、PCが行う動作をより正確に表現するために、使用する「能力」を変更することは許されているのだ。

1つ例を挙げてみる

例えばCoCでもしばしば登場する「登攀」という行動だ。切り立った崖を登る際に使用する行動である。WoDでは通常、「運動」+「筋力」で登攀判定を行う

しかしここでPCが何者かに追われている状態で、且つPCの筋力に不安があるとしよう。このときPLは「PCはより速く登ろうとしていること」「筋力よりもバランス感覚を重視して登ろうとすること」などを理由にして、「運動」+「筋力」ではなく「運動」+「敏捷」による判定を希望することができるのだ。

GMは状況やPCのステータスを鑑みて許可してもいいし、従来通りの判定にしても良い。許可する場合でも部分的にデメリットを負わせても良い。このあたりの裁量は他システムのGMと同様だ。

このように、同じ「技能」でも組み合わせる「能力」によって、その「技能」の使い道を幅広く表現できるのがWoDというシステムの素晴らしいところだ。

「脅迫」「説得」技能なども考えてみると面白い。どちらも社会技能だが、「脅迫」+「冷静」と「脅迫」+「筋力」ではどう違うだろう?「説得」だって「外見」「交渉」「冷静」どれを使っても、そのイメージに大きく違いが出てくるだろう。

「能力」二つを選んで判定する「才能による解決」も大変便利だ。例えばPCが隠したい事実に気づき始めたNPCが、PCに詰め寄るシーンを考えてみよう。RPで切り抜けられるならそれはもうPLの才能だが、PCにとってはこういう場面に適した「技能」がそもそも存在しない。(社交はなんとか使えそうだが、説得はPC自身が能動的に働きかける会話に使うものだ)

こういうときに、「内心を表に出さない胆力」+「最適なタイミングで相手をなだめ言いくるめる話術」として「堅忍」+「交渉」で判定するのも面白いだろう。

3種類9つの能力を、3通りの使い方で理解する。これによって、WoDにおける判定はどんなに特殊な状況でも、PCの行動を状況に忠実な(しかもRPを必須とせず)ダイスだけで表現することが可能なのだ。

サプリを導入して暗闇に生きる

これだけ素晴らしい判定システムがありながら、WoDの魅力はそれだけにとどまらない。冒頭にも述べたように、サプリを導入することで人外としてセッションを行うことができる

WoDにおける人外たちは、現代社会から身を潜め、しかし薄氷一枚隔てただけの、人間からとても近いところで生きている。そして彼らも人間文明の発展に伴い、それなりの変化がおきているのだ。

人外たちにも派閥があり、それぞれ思想信条が異なっている。人間からしてみれば常識はずれな事であっても、彼らにしてみればそれが常識でありルールなのだ。そして人目を隠れて生きるという特性上、彼らのルールはかなり厳しく守られている。

そういったルールや派閥・時代のしがらみの中、それぞれに特別な思いがあって、彼らは暗闇に生きている。人外好きにとって、こういう世界に飛び込むことができるというのは素晴らしいことだ。

終わりに

そこそこ長い文章でWorld of Darknessの魅力を、主にシステム面から紹介してみた。

WoDは現在絶版ということで、大変入手困難なシステムではある。筆者もWoDを所有しているわけではない。WoDの基本ルルブと吸血鬼サプリを手に入れた友人から、「GMをやる」という条件の基借りているに過ぎない。

それでも誰かがこれを遊ばなければ、誰かがこの魅力を周りに伝えなければ、WoDは本当にこの世から消え去ってしまう。逆にこのシステムを皆が遊び始めたら、ひょっとしたら新たに版元がついて再出版に漕ぎつけるかもしれない。

本記事がその為の一石となっていれば幸いである。

ちなみにもし、本当に低い可能性だと思っている「WoDを持っている・遊んでいる」という人がこの記事を読んでくれたなら、是非連絡をして欲しい。この記事へのコメントでも構わない。

筆者はこんな記事を書いているが、WoDのセッション経験はまだたったの2回。しかも両方GM。シナリオだって苦肉の策で2回目から自作という暴挙に出ている。

世にあるリプレイの数も少なく、本来どのような感覚で進めればいいシステムなのかはイマイチつかみ切れていない。色々とお話を聴かせてほしいのだ。どんなセッションをしたか、シナリオはどのように調達したのか。あるいはどのように作ったのか。

お礼になるかは分からないが、先ほど画像を上げた自作のキャラクターシートがある。手前味噌ではあるがxlsx形式で少しばかり関数も使った、けっこう使いやすいキャラクターシートだ。

ルルブが無くても大まかにわかる範囲で長所の解説も記載している。ヴァンパイア:ザ・レクイエムにも同様に対応できる。連絡さえいただければいつでもお渡しすることを約束しよう。

宛先不明の私信で記事を終える非礼をお詫び申し上げて、本記事を終わりとする。